あのニュースで得する人損する人というテレビ番組で放送されていた熱でも死なない食中毒菌セレウス菌について書いてみようと思う。
この世に存在するほとんどのウイルスや細菌は熱やエタノール、塩素などの消毒剤に弱い。しかしながら、一部の細菌やウイルスは熱やウイルスに対する非常に高い防御力を持つ物が存在する。
何故熱や消毒剤に強いのかという疑問が当然出るわけだが、キーワードは芽胞とエンベローブという言葉だ。
エンベローブは主にノロウイルスやアデノウイルスなどに関連する事であり、食中毒の趣旨とは少々外れる(ノロウイルスは食中毒でもあるが)し、熱に対しては普通の細菌やウイルスよりは強いがそれでも85℃1分以上で始末できる。
よく熱でも死なないとか加熱すると増えるなどといわれている菌は芽胞という物を作りだす種類だ。
以下、芽胞についてWikipediaより引用。
芽胞(がほう、spore)とは、一部の細菌が形づくる、極めて耐久性の高い細胞構造。胞子膜、皮層、芯部からなり、胞子膜の外側に外皮を持つものもある。
引用ここまで。
このように芽胞とは極めて耐久性が高い細胞構造という事だが、どのくらい強いかというと、まず高温に非常に強くなんと100℃1時間でも不活化できず、約2気圧の飽和水蒸気中で121℃15分以上もしくは乾熱処理180℃30分あるいは160℃1時間以上で処理しないと不活化できないのだ。
消毒剤に対する抵抗力も非常に強く、次亜塩素酸系の物かグルタルアルデヒド(医療機関などで使われている非常に強力な消毒剤)以外の物はほとんど効果を期待できない。まさに最強の盾を持つ細菌といっても過言ではない。
では、この芽胞を持つ有名な細菌なのだが、セレウス菌以外でもウェルシュ菌、ボツリヌス菌などが有名所だろう。
日本でのボツリヌス菌の発生は少ないが、もし感染してしまうと重症化する事も少なくない。ちなみにボツリヌス菌の出す毒素1gの殺傷力は約100万人ともいわれている最強最悪の毒素だ。
ウェルシュ菌の発生は実はセレウス菌などよりはるかに多いが、症状が比較的軽い為スルーされる事も多い。テレビではカレーでセレウス菌食中毒になどと言っていたが、形態の非常に似ているウェルシュ菌食中毒の方が多いだろう。
これらの細菌が怖いのは我々の常識である食品は熱を通せば大丈夫が全く通用しない点にある。
カレーやシチューなどは熱を通せば何日でも食べられるという常識、沸騰させれば菌は死ぬという常識が食中毒を起こす原因になっているのだろう。
では予防方法だが、セレウス菌、ウェルシュ菌は基本的に同じ。カレーやシチューの作り置きに注意(私も楽をする為によく作り置きをする)もし作り置きする場合には賢い主婦の人は当然やっていると思うのだが、小さく分けてすぐさま冷凍する事だ。
これらの菌は40℃から45℃くらいを最も好み一気に増殖する為、この温度帯を避ける事で増殖を防ぐ事ができる。
それから食中毒を防ぐ上での3大原則という物がある。
①つけない!
トイレに行った後、調理の前、食事の前にはしつこいくらいに手を洗う事。肉や魚、野菜などは調理前に必ず丁寧に流水で洗う事。まな板や包丁などの調理器具はその都度しっかり洗浄、除菌する事。
②増やさない!
ほとんどの菌は低温に弱い。少しの時間でも油断せずに10℃以下(出来れば4℃以下)で冷蔵保存する事。
③やっつける!
しっかり消毒する事。熱消毒の基本は75℃で1分以上だが、ノロウイルスのように85℃で1分以上やセレウス菌などのような熱に強い芽胞を持つ菌はこの限りではないので注意が必要。
消毒剤はアルコール剤や次亜塩素酸系が基本になるが、アルコール剤はノロウイルス、芽胞を持つ菌には効果がない。できれば次亜塩素酸系の物を使う事。
この3大原則は必ず守る事。
さらに、それぞれの食中毒菌に対して最低限の知識は持っておく事が非常に大事だ。特に主婦は調理を担当している事も多いので家庭を守る上でも予防方法、消毒方法などは知っておいた方がいいだろう。
最後にテレビでは納豆などの発酵食品で食中毒を防げると言っていたが、あまり信頼しすぎない方がいいだろう。
確かに食べないより食べた方が腸内環境なども改善するので良いとは思うが、発酵食品を食べれば防げるというはっきりとした根拠はない。あくまで食べないより食べた方が良いくらいに思っておくべきだろう。
消毒剤は次亜塩素酸ナトリウム(家庭用ハイターなど)が基本になるが、次亜塩素酸ナトリウムは金属を錆びさせたり、残留性の高さによる人体への影響が強かったりするので、同じ塩素系の次亜塩素酸水や二酸化塩素剤がおすすめだ。
私は二酸化塩素剤より値段が安い次亜塩素酸水を使っている。台所にスプレーを1つ置いておけば調理器具の除菌が簡単にできるのですぐに習慣になるだろう。
(関連のある外部リンク)
・食中毒を起こす微生物|食品衛生の窓
・梅雨~夏場にかけての食中毒予防対策