2013年当時の状況
2013年、超音波加湿器はネット上で袋叩きにされていた。
「白い粉が出る」「加湿器病になる」「レジオネラ菌が危険」…。多くのサイトが「超音波は捨ててハイブリッドや気化を買え」と書いていた。
なぜ私は超音波を使い続けたのか
理由は簡単だった。
電気代が安い、パワーもある、うるさくない、小さい。
スチーム式は電気代が馬鹿みたいに高い。2~300Wなんてストーブと同じくらいだ。気化式は弱いし、フィルターが臭いし、高い。ハイブリッド式は高い上に、私が買った物はすぐ壊れた。
超音波だけが私の希望に全て答えていた。
加湿器病のリスク
たしかに超音波式加湿器は加湿器病のリスクがある。
水に何が混ざっていようが全部霧にしてしまうから、水の中に細菌等が繁殖していれば細菌が混ざった水を口や鼻から吸い込むことになる。
しかしメンテをしっかり行えば大丈夫だ。
ほとんどの超音波加湿器はタンクと本体を簡単に分離させられる。まめにタンクをゆすぎ、本体部分を洗ってあげれば心配ない。
私は10年くらい超音波を使っていたが加湿器病にかかった事などなかった。
レジオネラ対策
レジオネラというのはレジオネラ症を引き起こすグラム陰性の桿菌で、銭湯等でよく発生し毎年数人亡くなっている。
こいつが超音波加湿器の水の中で繁殖してしまうのだ。
超音波加湿器を掃除せずに水を継ぎ足して使っていると本体部分にぬめりが出てくる。これをバイオフィルムというのだが、このぬめりの中にやつらはいる。
そのぬめりを丁寧に洗い、レジオネラが苦手な塩素系の除菌剤(次亜塩素酸水など)を入れておけば大丈夫だ。
私はほぼ毎日洗い、定期的に次亜塩素酸水で除菌していた。
2013年当時の結論
私の場合だがほぼ1日で水が無くなってしまうくらい使っている。水を補給するついでに本体を軽く洗っている感じだ。大して面倒でもない。
このくらいの事ができない人は超音波を使うべきではないだろう。きっと気化やハイブリッドのフィルター交換も面倒だからと決められた期間でやらないんじゃないだろうか。
そんな人はスチーム式にしてミネラルでガチガチになったら捨てる事をおすすめする。
それから12年:何が変わったのか
韓国加湿器殺菌剤事件の衝撃
2013年の記事で「韓国の加湿器殺菌剤で何百人も死人が出ていた」と書いた。
あの事件の詳細が、その後明らかになった。
事件の全貌
項目 | 内容 |
---|---|
期間 | 2001年〜2011年 |
被害者数(2016年末時点) | 死者1,006人、負傷者4,306人 |
主な原因物質 | PHMG、PGH、CMIT、MIT |
最大の加害企業 | オキシー・レキット・ベンキーザー |
事件は2011年に発覚したが、企業は当初、因果関係を否定。2016年5月になってようやく謝罪した。
発売から責任認定まで15年。
日本への影響
日本では問題となった製品は流通しておらず、同様の被害は報告されていない。
この事件以降、日本の加湿器メーカーには問い合わせが殺到し、「韓国で事故を起こした問題となる成分は一切使用しておりません」との告知が必要になった。
レジオネラ症の現状(2024-2025年)
2023年のレジオネラ症届出数は2,290例で、新型コロナ流行後も減少はわずかだった。これは、レジオネラ症が環境中の菌を含んだエアロゾル吸入により感染する疾患であることと関連している。
加湿器由来の事例
厚生労働省によると、加湿器からのレジオネラ属菌の感染事例が10件、その内3名が死亡している。
特に記憶に新しいのは以下の事例だ。
2018年1月、大分県の高齢者施設
80歳代の男性2人と90歳代の男性1人がレジオネラ肺炎を発症し、1名が死亡。加湿器の水タンク内にぬめりが確認され、22万個/100mlのレジオネラ属菌が検出された。
主な感染源
感染経路(確定・推定)は、水系感染が6,386例(31.3%)、塵埃感染が1,180例(5.8%)となっている。
加湿器が原因になるのは、超音波式だけではない。
気化式の加湿器でもレジオネラ属菌は発生する。フィルターに雑菌が繁殖していると、ファンの風に乗って飛散することがあるため、定期的な手入れが重要だ。
コロナ後の次亜塩素酸水ブーム
2020年、新型コロナウイルスの感染拡大で、次亜塩素酸水を加湿器で噴霧する動きが広がった。
混乱の発生
2020年6月、厚生労働省・経済産業省・消費者庁の3省庁連名で「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が公表され、物に付着したウイルス対策の手法として次亜塩素酸水が挙げられた。
しかし同時に、厚生労働省は「消毒効果を有する濃度の次亜塩素酸水を吸いこむことは、推奨できません」としている。
誤解も多発
次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウム(ハイター等)を混同する人が続出。花王には「手指の消毒に使えるか?」「加湿器に使用できるか?」などとの質問が寄せられた。
次亜塩素酸ナトリウムは非常にアルカリ性が高く、加湿器やスプレー容器に入れ直しての使用は非常に危険だ。
現在の見解
WHOは「COVID-19について、噴霧や燻蒸による環境表面への消毒剤の日常的な使用は推奨されない」との見解を示している。
私は現在も次亜塩素酸水で加湿器のカビ対策をしているが、空間噴霧のためではなく、タンク内の除菌のためだ。
超音波加湿器の技術進化
2025年現在、超音波加湿器は確実に進化している。
主な進化ポイント
機能 | 説明 |
---|---|
UV除菌機能 | タンク内の水をUVライトで除菌 |
上部給水 | タンクを外さずに上から注水できる |
銀イオン抗菌カートリッジ | タンク内の雑菌繁殖を抑制 |
次亜塩素酸水対応 | 次亜塩素酸水を使用できるモデルが増加 |
しかし、本質は変わらない。メンテが命だ。
どれだけ除菌機能が付いていても、タンクやノズルのぬめりを放置すれば雑菌は繁殖する。
2025年版:各方式の比較
加湿器には「スチーム式」「気化式」「超音波式」「ハイブリッド式(温風気化式)」「ハイブリッド式(加熱超音波式)」の5つの加湿方式がある。
方式 | 1時間の電気代 | 1ヶ月の電気代(8時間/日×30日) | 長所 | 短所 |
---|---|---|---|---|
超音波 | 約0.7〜0.9円 | 約168〜216円 | 静か、省エネ、安い | 雑菌リスク、毎日の手入れ必須 |
スチーム | 約4.0〜8.1円 | 約960〜1,944円 | 衛生的、高加湿 | 電気代高い、熱い |
気化 | 約0.1〜0.7円 | 約24〜168円 | 省エネ、安全 | 弱い、フィルター交換 |
ハイブリッド(温風気化) | 約0.8〜3.5円 | 約192〜840円 | バランス良い | 高い、大きい |
※電気代は電力量料金単価31円/kWhで計算
2013年と2025年で変わったこと
電気代の差は広がった。
スチーム式は1日8時間、30日間使用した場合、約960〜1,944円。超音波式は約168〜216円。
12年前も高かったが、電気代の高騰により、スチーム式の負担はさらに大きくなった。
一方、超音波式は変わらず経済的だ。
12年使い続けた結論
2013年、私は「メンテすれば大丈夫」と書いた。
2025年、12年使い続けた結論はやっぱり大丈夫ということ。
当たり前だが一度も加湿器病になっていない。
技術は進化したが、本質は変わらない。
超音波加湿器は「危険な製品」ではなく、「メンテが必要な製品」だ。
超音波加湿器の故障対策
もし急に超音波加湿器の霧が出なくなった時、1つ確認して欲しい点がある。
超音波加湿器は本体部分の振動子で水を霧化させるのだが、そこがヌメリ等で汚れてしまっていると霧化できなくなってしまう。
その部分を指の腹で優しく洗ってやると直る場合もあるのでチェックしてみるといいだろう。
気をつけなければいけないのは超音波加湿器の本体にある振動子だ。だいたい黒いパッキンに覆われている白い円形のものなんだが、ここで水を霧化している。
洗う時にここを傷つけてしまうと超音波加湿器は死んでしまうのだ。優しく洗ってあげよう。