2014年、私が書いたこと
当時の記事を読み返すと、恨み節が満載だ。
上司から強制されてゴルフを始めた私は、給料も低いのに道具一式揃えさせられ、毎日仕事が終わった後に練習し、聞きたくもないゴルフの講釈を聞かされた。休みの前の日に上司から声をかけられるとまたゴルフかと思い嫌で嫌で仕方なかった。
料金も高い、手軽に楽しめるわけでもない、イメージもあまりよくない。これが今のゴルフの現状だろう。これでは強制なしでゴルフを始めて継続的にプレーする若者が少なくなるのは当たり前だ、と。
そして私はこう結んでいた。
2025年、ゴルフ人口はどうなったか
結論から言おう。予測は当たった。
ゴルフ人口の推移
- 2014年:860万人
- 2019年:580万人(280万人減)
- 2024年:530万人
2024年のレジャー白書によると、ゴルフ人口は530万人で前年比3.9%増となったが、2014年と比較すると330万人、率にして38%も減少している。
10年で3分の1以上が消えた。私の予測通り、いやそれ以上に減少した。
しかし、想定外のことがあった
コロナ特需(2020-2022年)
2020年、新型コロナウイルスの感染拡大で状況が一変した。
ゴルフは「三密を避けられるスポーツ」として注目を集め、若者を中心に新規参入者が急増した。39歳以下の予約割合は2015年の10.9%から2020年には21.6%と倍増し、若者予約の伸び率は毎年20%超を記録した。
さらに驚いたのは女性だ。2020年3月から9月の累計で、20代から30代の女性来場者数は前年比約140%増加した。
飲み会もカラオケも制限された。旅行にも行けない。そんな中、屋外で密を避けられるゴルフが選ばれた。リモートワークで平日ゴルフも可能になった。渋野日向子選手の全英優勝(2019年)やYouTubeの影響もあった。
2014年の私は、「若者が増える理由がない」と書いた。しかしコロナという想定外の追い風があった。
しかしブームは終わった
2025年5月のゴルフ場利用者数は前年同月比1.0%減少。コロナ禍のピークだった2022年5月と比較すると大幅に減少している。
コロナが落ち着き、旅行や飲み会が復活すると、ゴルフは再び選ばれなくなった。2020年から2022年の若者ブームは、結局一時的なものだったのだ。
地方ゴルフ場の倒産ラッシュ
予測通り、いやそれ以上に厳しい現実がある。
2024年1月には長野県伊那市の信州伊那国際ゴルフクラブが倒産。宮城県名取市の仙台空港カントリークラブ、静岡県御殿場市の東名小山カントリークラブも経営破綻した。
地方では少子高齢化や過疎化の影響が大きく、ゴルフ場の維持が困難になっている。広大な土地や人員が必要で、利用者が減少すればその維持費をまかなえない。
そして2025年問題だ。団塊世代が75歳以上の後期高齢者となり、これまでゴルフ業界を支えてきた世代がゴルフをリタイアする可能性が高まっている。
インバウンドという新たな希望
ここで意外な展開がある。外国人だ。
2023年以降、日本のインバウンド需要が再燃し、ゴルフ目的の訪日外国人が急増している。日本のゴルフツーリズムには2200億円規模の市場が未発掘のまま眠っているとされる。
三井不動産グループのリソルホールディングスは、ゴルフ場に併設する宿泊施設を2030年までに現在の5倍にする計画を発表した。
日本には約2,200のゴルフ場がある。これは世界で第三位の数字だ。メンテナンスが行き届いたコース、質の高いレストランと大浴場、リモコンカートやGPSナビ。訪れた外国人からの評価は高い。
しかし、現実はまだ厳しい。日本のゴルフツーリズム市場規模は現在数十億円で、世界全体の1%以下にすぎない。多くのゴルフ場はインバウンドに消極的だ。言語対応、外国人向けサービスが不足している。
期待は大きいが、本格化はまだ先だ。
私の予測は当たったのか
| 項目 | 2014年 | 2025年 | 予測 |
|---|---|---|---|
| ゴルフ人口 | 860万人 | 530万人 | ✅ 的中(38%減) |
| 若者 | 減少中 | コロナで一時増加→再び減少 | ⚠️ 想定外 |
| 料金 | 高い | ほぼ変わらず | ✅ 的中 |
| イメージ | 悪い | 根本的に変わらず | ✅ 的中 |
| 地方ゴルフ場 | 苦戦 | 倒産ラッシュ | ✅ 的中 |
| インバウンド | なし | 期待はあるが本格化せず | ⚠️ 新要素 |
予測はほぼ当たった。
コロナという想定外の追い風があった。インバウンドという新たな期待もある。しかし本質は変わっていない。
料金は高いまま。車がないと行けない。イメージも変わらない。強制ゴルフもなくならない。
そして2025年問題が目前に迫っている。
さいごに
2014年の私は、最後にこう書いた。
この言葉は今も変わらず真実だ。
ゴルフが本当に必要とされているなら、料金は下がり、若者が自然に始め、地方ゴルフ場も倒産しないはずだ。しかし現実は違う。
コロナで一時的に若者が増えた。でもそれは「ゴルフが魅力的だから」ではなく「他に選択肢がなかったから」だ。選択肢が戻れば、若者は離れた。
インバウンドに期待する声もある。確かに可能性はあるだろう。しかし外国人頼みという時点で、国内での「必要性」が失われていることの証明ではないのか。
格別好きなわけでもないが、長年親しんできたゴルフが衰退していくのは少し寂しい気もする。しかし、時代に即していないのなら仕方がない。
必要とされているものが残っていくのが世の習いなのだから。
参考情報
- 公益財団法人日本生産性本部「レジャー白書2024」
- 一般社団法人日本ゴルフ場経営者協会
- 各種ゴルフ業界ニュース

